paradoxⅡ

Judas 03 嬉しげな微笑

「や、本っ当に待たせちゃったね。ごめんごめん」
「今何時だと思ってるんですかー!!?」
 キールさんが笑いながら頭を掻いて現れたのは、時間が流れに流れて、まさかの昼すぎだった!! な、何時間待たされたんだ!?
 昼頃になって、キールさん遅いですね~って言い始めた。さすがにお腹が空いたから、昼ご飯は食べてきた。けどまさか……その後も待たされるなんて!
 私が思わず立ち上がって通路に出ながら叫ぶと、キールさんは申し訳なさそうに笑った。
「何せ、教団のブラックリストに載ってた一味だからね。倒したの僕とノストだし、いろいろ聞かれてたんだ。本当にごめんね」
「わ、私はもういいですけど……」
 キールさんが悪いわけじゃないし、怒っても仕方ない。それにキールさんを待ってたのは私じゃなくて、ノストさんだ。
 私はそう言いながら、イスから立ち上がるノストさんを横目で見て言葉を濁した。私が少し身を引くと、ノストさんは通路に出て、同じくらいの身長のキールさんを見た。でも、キールさんの方がちょっとだけ身長高い……かな。さすが年上。
 そのノストさんを見返しながら、キールさんが首を傾げて言った。
「会った時から思ってたんだけど、ノストって20歳のはずでしょ?の割に、少し幼さが残るって言うか……童顔?」
「ど……童顔……?!」
 それはノストさんの外見が17歳で止まってるからなんだろうけど、キールさんが何気なく言った言葉に、私は衝撃を受けた。もし本当にノストさんが童顔だったら……この顔は、不老抜きにしても大体保存なわけですか……!?
 それに対して、ノストさんは手のひらを自分の前に出した。そこに金色の光が溢れ、銀色の光を放つジクルドが現れる。見慣れない現象に目を瞬くキールさんに、ノストさんはジクルドを目で差して言った。
「コイツのせいで、3年前から不老になってる」
「え……!」
「……へぇ~、ってことは17歳のままなのか。あえて聞かないでおくけど、なんか大変そうだねぇ」
「え……?!」
 な……何この人達!? そのことを隠すことなく喋ったノストさんも驚きだけど、あまり大きなリアクションをしなかったキールさんも驚きだ!交互に二人を振り返って、私が二人の代わりに驚いていた。
 ノストさん……キールさんに不老のこと話した。やっぱり友達だから……信頼できるから、なんだろうな。私がそれを聞かされたのは、会って数日後だったなぁ……。どう考えたって私よりキールさんの方がノストさんと一緒に過ごした時間の方は長いから、これは当然の差なんだろうけど……ちょっとなんか嫉妬しちゃうかも……。
「……で、ノスト。何処まで話したっけ?僕が、君を連れて行かなかった理由……だったかな?」
「……もういい」
「え?」
 やっぱりあまり本題に入りたくなさそうなキールさんが、静かにそう切り出した言葉を、ジクルドを消したノストさんは跳ね除けた。ぽかんとするキールさんを見て、ノストさんは言った。
「キール、手合わせしろ」
「……別に、いいけど……理由はもういいの?」
「下僕、代わりの剣持って来い」
「だ、誰が下僕ですかーッ!! な、名前で呼んで下さいよっ!!」
 不思議そうな顔のキールさんの問いを無視し、ノストさんは私を見て言った。ううもう、下僕でも何でもいいけどさぁ!名前で呼ばれたら呼ばれたで照れるんだけど!いや、深い意味はないけど、うん、まぁ照れるんだ!!
 多分、ジクルドで戦うと、キールさんの剣を切っちゃうからだ。ジクルドに切れない物はない。切れないのは、オースで構成されているアルカだけ。
 当然、剣が何処にあるかなんて私は知らない。代わりに、何も聞かずにキールさんが持ってきてくれた。キールさんが持っているものと同じデザインの剣だった。彼のスペアらしいから、手入れも切れ味もバッチリだ。
 受け取ったそれをノストさんは抜いてみて、少し剣身を見て、すぐに目を離した。うん、やっぱり問題ないみたい。
「さっさと出ろ」
「……本当に、もう理由はいいの?」
「くどい」
「まぁ、ノストがいいって言うんならいいけど……」
 外に出ようと横を通り過ぎるノストさんを見てから、納得が行かなさそうな顔をしたキールさんもその後に続く。
 私が二人を追って外に出ると、大聖堂前の階段を下りてすぐの大通りで、ノストさんとキールさんは向き合った。二人の間に漂うただならぬ緊張感を感じ取り、じわじわと野次馬が集まる。
 鞘に入ったままの剣を持ち、柄を握ったキールさんは、懐かしそうに微笑んだ。
「……懐かしいね。昔も、よく手合わせしたよね。ノストに誘われて、僕は仕方なく頷いて……」
「あの時、お前は本気じゃなかった」
「うん。君が手合わせしようって言う度に、また騙すんだなって気が進まなかったよ。……でも、それは昔の話」
 そう言って、キールさんが剣を抜いた。銀色の切っ先をノストさんに向けて、キールさんは……その笑顔に少しだけ鋭いものを含ませて、楽しげに笑った。強敵と会いまみえた剣士って言うのは、もしかしたらこんな顔なのかもしれない。
「今の僕を縛るものは何もない。強くなった君と、思う存分戦える」
「……あぁ。借りは返す」
 剣先を下ろして構えたキールさんに、ノストさんも借りた剣を構えて言った。その目は、前にフェルシエラでラスタ様と戦った時みたいに、真剣で。
 ……この二人……きっとお互いに、もう一度、戦える日が来るのを待っていたんだ。
 キールさんは、強くなったノストさんと。
 ノストさんは、本気のキールさんと。
 互いに理不尽だった、過去を清算するために。

 先に仕掛けたのは、やっぱりと言うかノストさんだった。
 跳んだかと思うと、刃と刃がぶつかる音。連続して細かな音を奏でながら、二人の剣が幾度も重なる。
 間合いをとり、詰められ、弾かれる。そこに引力が働いているかのような応酬だった。
「す、凄ぇ……キールと互角だぞ……」
「〈驟雨の伯爵〉様が手こずってるぜ……信じられねぇ」
「違ぇよ、今は〈一閃光〉だっただろ」
「いや、〈橙の一陣風〉じゃないっけ?」
「〈瞬の王子〉じゃなかったか?」
「あ、それだそれ」
 横からそんな会話がしたから見てみると、朝方キールさんと一緒に大聖堂にやって来た用心棒さん達だった。五人いる彼らは二人の攻防を、驚愕した顔で見ていた。
 キールさんそんなに二つ名あるんだ……〈驟雨の伯爵〉、〈一閃光〉、〈橙の一陣風〉、そして〈瞬び王子〉。どれも、一瞬で相手をのしてしまうところから来てるんだろうな……そんなキールさんと今、互角に戦ってるノストさん……今更だけど、凄く強いんだな……。
 両者が刃を弾き合って距離をとる。が、即行地を蹴って、見えない速度で繰り出される刃達がまた細かく、何度も衝突する。
 動いた分だけウォーミングアップになったのか、どんどんスピードが上がってきてる……最初の方はちょっと見えてたけど、もう全然見えない……!だから何が起きてるかよくわからない私は、手のひらを握り締めて、はらはらしながら二人の残像を見つめていた。
 やがて――
 ヒュッと鋭く風を裂く音がして、二人の動きが止まった。

 二人とも、お互いに剣を突き出した格好で、お互いを見据えていた。
 ノストさんの剣先は、キールさんの首横に。
 キールさんの剣先は……ノストさんの首横手前に。
「……き、キールが負けた……!?」
「嘘だろ?!」
「ま、マジか……!?」
 横の用心棒さんたちが声を上げる。
 二人の腕の伸び具合を見ればわかる。ノストさんはまっすぐ腕を伸ばしているけど、キールさんは少し折れていて。ノストさんより一瞬遅かった……ってことだ。
 その差を見て、今まで真剣な顔をしていたキールさんは、破顔一笑した。
「あはは、突き出すのは同時だったのに、ノストの方が早かったね。はは、今度は僕が負けちゃったな~」
「………………」
 嬉しそうなその笑顔を、ノストさんは何処か納得が行かなさそうな顔で睨みつけていた。ノストさん……勝ったのに、嬉しくないのかな?
 と思っていたら、ノストさんはすっと剣を下ろした。もう片方の手を出してキールさんに言う。
「その剣貸せ」
「ん?どうかした?」
「いいから貸せ」
「ん~……まぁいっか」
 少し考えるような顔をしてからすぐ、キールさんは持っていた剣をノストさんに渡した。両手に同じデザインの剣を持ったノストさんは、受け取った方の剣をまじまじと見て、それから両手を下ろして。そして最後に、顔を上げてキールさんを睨みつけた。
 な、なになに?? 何が起こってるかよくわかんないですが……!キールさんはキールさんで、わかっていたようにその視線受け止めてるし!
 なんだかすっごく怒ってるらしいノストさんは、低い声で言う。
「キール……てめぇ、舐めてんのか」
「いや、だって仕方ないでしょ?どうやったって誤差って出るもんだし、完全に同じ物は作れないってよく知ってるはずでしょ、ノストだって」
「何で普段使ってる方を渡した」
「君だって普段使ってる物じゃない剣で戦うんだし、僕が合わせるべきでしょ?スペアとの差はほんとわずかだし、ま、このくらいのハンデなら問題ないだろうな~って思ったんだけど。まっさか、最後の最後でそれが響いてやられちゃうとはね~」
 キールさんは物凄く不満そうなノストさんに、あっけらかんとした様子で笑った。
 野次馬が散ってから、私が二人のところに近付いた。
「あの、キールさん……どうしてノストさん、怒ってるんですか?」
「普段使ってる剣と、スペアの剣、同じ物だけど、スペアの方がほんの少しだけ重いんだ。で、僕が使ってたのは、スペアの方。そのちょっとの重みの差で、最後、一瞬遅れちゃったんだ」
「そ、そうなんですか……」
 キールさんは、ノストさんから返してもらった剣を鞘に収めながら言った。た、確かにそれじゃあ、本気で戦いたかっただろうノストさんにすれば、かなり不満だろうなぁ……。
 ノストさんが、借りていた方の剣をキールさんに渡す。2本の剣を持ったキールさんは、まだ納得していないらしいノストさんを見て言った。
「でもほんと、ノスト、強くなったよ。10年前、僕に全然歯が立たなかったとは思えないね~」
「うるせぇ黙れこの裏切り者」
「ちょ、ノストさん……!? それはいくらなんでもっ……!」
 ノストさんが躊躇なく発した一言は、私の予想をとんでもなく越えていた!う、裏切り者って、キールさんが気にしてることを言うなんて、ひどすぎじゃないのっ!?
 とかいう私の心配は無用だった。キールさんは落ち込むこともなく、むしろ嬉しそうにニコニコして。
「あはは、そんな裏切り者をまだ友達だって思ってくれてるんでしょ?ノストはいっつもそうだよね~、気を許した相手だからこそ普段毒舌なんだよねぇ。僕みたいなポジティブ思考の人じゃないと、きっとノストの相手は気が滅入るよ~?その点、ステラさんは大丈夫だね」
「え、え……??」
「……ぶっ殺すぞてめぇ……」
「ふふふ、できるかな~?」
 自分の毒舌を逆手に取られたのが悔しいのかムカつくのか、地の底から響いてきそうな低い声で、いつもより物騒なことを言うノストさん。それに対し、キールさんは面白そうに、彼を試すように笑う。
 な、なるほど……この二人、上手い具合に性格が噛み合ってるんだ。毒舌をさらりと受け流せるキールさんと、常に上から目線のノストさんと。だからこそ、友達になれたのかもしれない。
 というか……気を許した相手ほど毒舌って……わ、私も、ノストさんに気を許してもらってるって考えていいのかな……?! 確かに私、割とポジティブ思考かもしれないけど……!それって結構面倒な話じゃ!?
「さて、と。君達、旅の途中なんでしょ?次は何処に行くの?」
「あ、今、タミア村を目指してるんです。なので、とりあえずナシア=パントに入ろうと思ってます」
「タミア村かぁ……僕も、シャルティア内はあちこち行ってるけど、そこには行ったことないな。なんか変わった村らしいし、あんまり行きたいと思わないなぁ。ってことで気を付けてね、ステラさん。危なくなったら恋人に守ってもらうんだよ~」
「だッ、だから違いますってばッ!!! ああもうっ、それは凄まじく迷惑な話ですっ!!」
 あわあわした私は、びしっとキールさんを指差して言い切った。なんかもう何を言ってるのかわからん!
 すると、私の横から、ノストさんが一言。
「下僕が姫気取りか。確かに凄まじく迷惑な話だな」
「そ、そこですか!いやあのでも、危なくなったら助けてくれるって信じてますよ!信じてますからねっ!?」
「知らん。襲われる原因を持つお前が悪い」
「そ、そりゃそーですけど!襲われる原因がわかんないじゃないですかっ!」
 ルナさんに似てるから襲われるってのはわかってるけど、その他に理由があるとしたら一体何なんだ!?
 普通に「ルナさんに似てるから」って返答が来ると思ってたら、ノストさんは淡々と喋り出した。
「ルナと激似。弱い。イチイチやかましい。馬鹿。よくコケる。妨害ばっかする。メシ食うのが遅い。メシ作る度に性懲りもなくニンジン入れてくる」
「って!? 最初の1つしか関係ないじゃないですか?! 全部ノストさんが思ってることでしょう!しかも好き嫌いはよくないですよっ!ニンジンは私からの挑戦状です!!」
「なら残念だったな。読む前にテリトリーから排除してる」
「なぁ~っ?! それじゃニンジンが可哀想じゃないですか!せめて一口食べてあげて下さいよ!そしたら残りは私の皿に……うつ………………い、いやななな何でもないですッ!!!」
 寸前で自分が言いかけたことにはっと気が付いて、私は慌てて首を横に振った。
 な、何言ってるんだ私!? テンションがおかしい!ニンジンが挑戦状とか馬鹿でしょ私!? と、とりあえず落ち着け私~~っ!!
 ぜーぜーと息をして、なんとか落ち着くと、キールさんが笑っていた。
「あはははっ、君達、いいコンビだね~!見てて面白いよ~」
「私は面白くないですよッ!!」
 なんかサリカさんとかフィアちゃんとか、皆にはよくそう言われるけど、私は断じて面白くないっ!いっつもノストさんに負けてばっかだし!
「ふふ、その調子なら大丈夫そうだね。ステラさん、ノストをよろしく。僕もそろそろ、仕事に戻らなきゃ」
「あ……そうですね。私達も、そろそろ発たないと、夜遅くなっちゃいますし……」
「うん、だから、お互いに行かないと」
 お互いに、行くべき道を進まないと。
 10年の時を経て、再び交わった道。でもそれはすぐに岐路に至って、ノストさんとキールさんはそれぞれの道を行く。
 ……私も、今はノストさんと一緒の道にいるけど、きっといつか、その分かれ道はやって来る。
「あの、キールさん……また、会いましょうねっ!もちろん、ノストさんも一緒に!」
「うん、もちろんだよ。また会おうね、ステラさん。それから……ノスト」
「……あぁ」
 微笑んだキールさんは、すっと手を差し出した。ノストさんも手を上げて、その手のひらとパンっと打ち合う。
「今度会ったら、また手合わせしてほしいな。僕とまともに手合わせできるの、今のとこ君だけみたいだからさ」
「次はてめぇの剣は借りねぇ」
「あはは、いいよ。楽しみにしてるね。それじゃあ……またいつか。僕の親友」
 手を小さく振って、キールさんは、微笑んでいた。
 心の底からの、嬉しそうな笑顔だった。

 

 

 

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「……親友かぁ……」
 キールさんと別れて、ノストさんと二人で歩く道。私は、別れ際のキールさんの言葉を思い出して呟いた。
「いいですね、親友って!羨ましいです!」
「面倒なだけだ」
「自分のこと、いろいろ知られちゃってますからね~?」
「………………」
 私がわざとらしく言ってみると、ノストさんは黙り込んだ。あはは、やっぱりね。そうは言ってるけど、そういう間柄の人は何も言わなくても信頼できるってことだ。ほんと、羨ましいな……。
「いいなぁ……私もお友達ほしいです。なんだか、離れていても信頼し合ってるだけでまた会えるって感じがして羨ましいです~……」
「違ぇよ。ブチのめすために会いに行く」
「ほらほら!無関心なノストさんが、会いに行くなんて自分から言うんですよ!? 羨ましいです……!」
「………………」
 さっきから羨ましい羨ましいってしつこい私に呆れたのか、ノストさんは面倒臭そうに溜息を吐いて。
「……お前は、いねぇのか」
「え?」
「いろんな意味で会いたい奴」
「いろんな意味って……」
 ど、どういう意味ですかね……ノストさんの場合は、キールさんと戦うために会いに行くって感じだからか。
 私が、会いたい人……か。そりゃ、サリカさんとかフィアちゃんとか、セル君とかミカちゃんには会いたいよね。けど……、
「いない……ですね。というか……ノストさんが会いたい人です!」
「はぁ?」
「いっ、いやあの変な意味じゃないんですが!私、村には会いたい人いないし、他のみんなには会いたいけど、そこまででもないって言うか……と、とにかく私!ノストさんは信頼してるので、会いたいと思います!!」
「馬鹿の思考は理解できねぇな」
「た、単純じゃないですかっ!信じてるから会っても大丈夫、会いたい!ってことですよ!? ……って、もしかして私のお友達ってノストさんなんですかっ?!」
 喋ってるうちに、私ははっとしてノストさんを見た。しょ、衝撃的だ……!し、信じてるし会いたいって思ってる人だから友達なのか?! って言うかその前に、私達ってどういう関係!?
 ノストさんはやっぱりくだらなさそうに。
「下僕にも友人がいたのか。残念だが人違いだ」
「ぇええッ!!? そー来ますかっ!ってゆーか私、結局下僕なんですか!? いっつもそう言ってますけど、なった覚えないですよ!フェルシエラで連れって言ってたじゃないですかっ!!」
「哀れだな。文字通りの意味もわからないか」
「……い、今、意味わかりましたよ……!」
 身分が何であれ、連れていれば「連れ」だよね……!何言ってるんだ私~!
 最終的に負けたらしい私が悔しがっていると、ノストさんが勝ち誇ったように言い切った。
「仕える相手がいただけよかったな、下僕」
「嬉しくないですよぉ……」
 確かに、仕える相手がいない下僕って寂しいかもしれないけど……意地でも頷いてやるもんかっ!
 歩きながら、ノストさんをちらっと盗み見る。どうせバレてるんだろうけど。
 ノストさん……本当に、私のことどう思ってるんだろ。フェルシエラで、とりあえず「居場所」って言ってたけど……。

『ノストはいっつもそうだよね~、気を許した相手だからこそ普段毒舌なんだよねぇ』

 ノストさんのことを熟知してるキールさんの言葉を信じるなら、これだけ毒舌で言われる私は、それなりに信用されてる……のかな。
 ……ま、いっか。ある程度は信頼してくれてるって、私が勝手にお友達だって思っとこ。
 信頼し合ってる友達なら、離れてもまた、会えると思うから―――