exodus
93 サーヴァント
小さな白い両手は、少しだけ冷え性気味で、ひんやりしていた。
……いや、馬鹿みたいに健康な自分の手が熱いだけかもしれない。とにかく、ひんやりしてて、柔らかくて、とても気持ちよかった。
「ううう~~~!!! フィアぁあーーッ!!」
「きゃっ!?」
うるうると本当に泣きそうな瞳でこちらを見ていたかと思えば、ルナは突然がばぁっと抱きついてきた。なぜか緊張して固くなっていたフィレイアは反応しきれず、目を忙しく瞬かせる。
でも、それも一瞬。遥か昔に触れて以来の温かいぬくもりが、とても懐かしくて——
涙が出そうになった小さな聖女の細い肩を抱き締めるルナは、震える声で言う。
「フィア……ホントに、リュオスアランないんだね。フィアぁ……柔らかくて気持ち良いよぉお……ぐすっ」
「……あ、あの、ルナ……泣いて、ます?」
この10年、人に抱き締めてもらったことなどなかったから、嬉しいと思いつつも、フィレイアはうろたえる。どうしたらいいかわからず、ただされるがまま突っ立っている。大体、泣きたいのはこっちだと言うのに。
いったん離れたルナの頬は、やはり涙で濡れていた。フィレイアでさえ、ルナの涙は数えるほどしか見たことがない。
「そりゃ泣くよぉ!友達に、やぁぁーっと触れたんだし!3年だよ?! 3年ずっと、髪を梳かしてあげるとか、着せ替えしてあげるとか、できなかったんだから!よかったよぉ……ふええん」
ぎゅっとしっかりこちらの両手を握り締めて、ルナは子供のようにボロボロ泣く。本当に稀な表情だ。いっそ清々しいまでの泣き顔を見ていたら、遅ればせながら自分も涙が溢れてきた。
親友同士、泣きながら、お互いのひどい顔を見合わせて、笑った。
「フィア……おめでとっ。よかったね」
「はい……」
——もう、聖女の証はいらない。
神の代弁者ではなく、人間の代弁者として。
しっかり地に足をついて、少女は見果てぬ道を行く。
……………………
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——そう。
世界は、変わっている。少しずつ、少しずつ。
神という独裁者の手から離れようとしている、人の世界。
そのように世界を導いているのは、人でも神でもない、たった一人の神子。
『あの子は……とても可哀想』
ノストがスロウとの手合わせもそこそこに飛び出していった後に、『彼女』はやって来た。
ヒースとステラを探しに来たというラベンダー色の髪の女性は、静かに問いかけてきた。
『必死にエオスを守っても、あの子は神子。どんなに願っても、あの子は一人ぼっち。神と同じように』
『でもあの子は、神と違って、とても繊細な心を持ってる。人間と同じように』
『神としての力、人としての心の間に、ズレが生じてる。それが肥大したら……どうなると思う?』
今まで考えてなかった側面だった。
無限の時を生きる彼女は、裏切られ続ける。
今はまだ、3年という距離。
だけど、時を経るごとに距離は開いていく。
彼女といるのは残酷かもしれない。特に、鏡のような自分は。
(……こんなこと、考えてる場合じゃないとも思うけど)
ルナは嘆息し、ごろんっと草むらの上に寝転がった。ぽかぽかの陽気の下、ぬくもりを溜め込んだ草は温かい。ヒースの家の周辺はすべてこんな感じだ。
昼寝をするにはちょうどいいかもしれない。目を閉じると、陽を透かした赤い視界が広がる。周囲の静かな森が眠りに誘おうとしてくる。……でも、眠気は来ない。
ゆっくり瞼を上げると、視界は澄み渡った空色に塗り替わる。抜けるようなこの蒼穹の向こうに、ステラはいるのだろう。だが自分には……いや、自分達には、行く術がない。
ステラを手中に収めた神が狙うものは、限られてくる。
となると、チャンスは一度だけ。そのチャンスを見逃すことなんてできないから、神経は尖りっ放しで睡魔さえ襲ってこない。
何より——
「……静かすぎる」
嫌な予感がこびりついて離れない。誰にともなく囁き、すっと立ち上がると、ルナは銃を抜いた。
場所を確認する。ここは、森に囲まれているヒースの家の傍。燦々と太陽が輝く昼時なのに、森は死んだように不気味に静まり返っている。鳥の声も風の音もしない。おかしなことに、ヒースの家からさえ物音がしない。中に皆いるはずなのに。
「だって貴方はもう、私の世界の範囲に入ってますから」
無音の世界に響いた声の方向を間違えるはずがない。
右手の方へ瞬時に銃口を向け——その先に立つ少女を見て、瞳が凍った。
森の中から、草を掻き分けながらやって来る少女。しかし草木が擦れる音さえしなかった。少女の挙動だけが世界から浮いて見える。ただ、彼女の持つ山吹色の剣が揺れに伴って、リィン……と綺麗な音を立てる。
自分と同じ顔を持つ少女が、愕然とする自分にくすりと微笑む。
「貴方には感謝してますよ、ステラのオリジナル」
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ルナさんには感謝してる。
私を受け入れてくれたこともそうだけど、何よりも、彼女が3年前、神様に協力してくれなかったら、私はここにはいなかった。
私を生んでくれた神様にだって感謝してる。
神子の私をそれとなく導いてくれたサリカさん、フィアちゃん、私を助けてくれたセル君、ミカちゃん、協力してくれてるスロウさん、今まで出会ってきた人たち皆に感謝してる。
もちろん……ノストさんにも。
でも、どうだろう?
私は、もらった恩に見合うだけのものを返してる?
「……返してない……」
膝を抱えて顔を伏せた格好で、私は小さく呟いた。
みんないい人だから、もしかしたら今頃、私を助けなきゃって思ってくれてるかもしれない。それは嬉しい。でも私は、いつも彼らに助けてもらってばかりだ。
「そんなに悩むことはないわ。人は、自分がもらったものを相手に返しているものよ……プラスもマイナスも、ひっくるめて」
伏せたままの私に、女の人の声が話しかけてくる。檻の向こうにいるエリナさんだ。……ユグドラシルの特性で、私の心の声が漏れてるみたい。
「相手が自分にとって、どういう存在かが関係してくる。友人なら、相手に親身になれば、相手も心を開くでしょう。ライバルなら、相手に負けないように必死になれば、相手も応戦しようとしてくるでしょう」
「………………」
「例えば……私にとってヒースは、外の世界をくれた人。きっと同じように、私はヒースに、私のような閉じこもってしまった人間の内の世界を教えたことになると思うわ」
……エリナさんは、恐らく私の監視だ。今はいないけど、ヒースさんと交代で。……といっても、私にこの檻は破れないから、無意味なような気もするけど。
彼らは檻の傍にいて、何かにつけ語りかけてくる。それは現状のことだったり、考えさせられる内容だったり、さまざま。
でも、正直……二人を、何処まで信用していいかわからなくて。私は、何も答えられない。
だって彼らは神の軍。それに、神様は私の体でエオスに行ってから沈黙してるけど……ここにいないわけじゃない。ユグドラシルは、神様の住まう世界であり神様そのもの。……でも、神様は全知だから、こうして喋らなくても知られてるかもしれないけど。
「ステラ、貴方にとって、ノストはどういう存在なの?」
「………………」
それまでエリナさんの言葉をボーっと聞き流していたけど、その一言だけは、はっきり耳に飛び込んできた。
ノストさん、って単語が入ってたからかな。それとも——その問いが、今までかけられたことのないものだったからか。
……そういえばこれまで、ノストさんにとって、私がどういう存在かしか考えてこなかったかもしれない。
自分のことは自分がよく知ってるって思ってたから、問いかけもしなかった。
でも実際、一番わからないのは自分自身。
私にとって、ノストさんはどういう存在?
居場所? ……うん、それもある。でも少し違う。
相棒? ……私なんかが釣り合える人じゃない。
……なんだろう?
思考が詰まって何も答えられずにいると、寂しげな笑いが聞こえた。
「あぁ……そうよね。自分を陥れた女となんて、話したくないわよね。ごめんなさい」
「あ……ううん、違います!わかってます。エリナさんは、私の目を醒まさせてくれたってこと」
「……ごめんなさい」
別の解釈されてしまって、私ははっと顔を上げて、檻ごしに横に座っているエリナさんに笑いかけた。でも彼女は、決まりが悪そうに視線を逸らす。こうして改めて見ると、綺麗な横顔。
『……そう。私は、ずっと貴方の母親よ。でも……貴方は、私の子ではいられない』
ここに連れて来られる前、エリナさんはつらそうな表情で、でも私を夢からガツンと醒ましてくれた。
……言われなかったら、神子だってことをちゃんと考えなかっただろうな。あのまま、ノストさん達と一緒に、人間のつもりで過ごしていたかもしれない。
私のために、言ってくれたんだ。
「……ふふ。ありがとうございます、お母さん」
「えっ……?」
ちょっと照れ臭かったけど、声に乗せてみると、エリナさんはアクアマリンの瞳を見開いて振り返った。素敵な大人の女性ってそれまでの余裕は空の彼方で、ぽかんと。
……そしたら。その顔に花が綻ぶように笑みが広がって、今度は私がぽかんとする側になった。
優しくて透明で、綺麗すぎて消えそうな笑顔。私ですらドキッとしてしまうくらい可憐だった。それをごまかすように私は戸惑いながら言う。
「あ、あの、お母さんって呼んでもいいですかっ!?」
「……ええ、ぜひ呼んで!嬉しいっ……ありがとう。……あの……も、もう一回……」
檻スレスレに身を乗り出してきたエリナさんは、少し恥ずかしそうにそう言う。なんだか私も影響されて照れ臭くなってきて、緊張しながら、もう一度呼ぶ。
記憶にもない、お母さんを。
「お母さん」
「……ステラ」
ぽつりと、私の名前を確かめるように呼んで、エリナさんはうつむいた。どうしたんだろうと思ってたら、キラキラと光るものが落ちるのが見えた。背景が黒だから余計に目立った。
「……嬉しい……もう、貴方とはお話できないって思ってた……」
細かく震える肩は、死後の心境を語る。仮初の生者が語る、ここに来てからのこと。
少しだけ上げられたエリナさんの顔。目元からこぼれる透明な雫が綺麗で。
「ステラ……ずっと、待ってた。ずっと待ってたのよぉ……親子として、貴方と、お話できる日が来るのを……」
「………………」
「でも、わたしはっ……待っててあげられなかった……貴方が起きるのを、待っててあげられなかったっ……!」
「お母さん……」
「きっと、迷惑だってわかっていたけれど……でも、お母さんって呼んでほしくてッ……」
これまで見てきた、毅然とした態度や穏やかな雰囲気をまとった女の人は、そこにはいなかった。いるのは、何処にでもいる、一人の弱い女性。
……エリナさんがお母さんだって記憶は、私の中には最初からない。
だからきっと彼女がいたら、私はもしかしたら自分が神子だって知らずに過ごしていたかもしれない。
彼女もそれがわかっていて、自分はいない方がいいのだと思っていて。そうなった現実はきっと幸せなんだろうと、自分に言い聞かせてて。
それでもやっぱり……目覚めた私と話して、「お母さん」って呼んでほしかったって。
「……お母さん……ごめんなさい。もっと早く、起きられなくて」
私も、お母さんが欲しかった。もっと早く会えていたら、よかったのに。
目を伏せ、そんな想いを込めて困ったように笑ってから、目線を上げた瞬間。視界が優しいローズピンクに染まる。
呆然とする私の肩を、ぎゅっと抱く細い腕。
「ステラ、ありがとう……目覚めてくれて、ありがとう」
多分、同じ術式同士、しかもオース同士だから反発しなかった檻の術式を、難なく通り抜けてきたエリナさんは、私を抱き締めて言う。今までで一番近い距離で聞こえる声。
——目覚めてくれてありがとうって言われて、思考が停止した。
……そう、今までのすべてのつらい出来事は、私がいたせいだから。
私が目覚めなければ、どうなっていたかな?
そんな無意味な自問が、その一言で綺麗に浄化されたような気がした。
温かい腕の中。
お母さんの腕の中。
「……っ……わたし……」
——生まれてきてよかった、って思う。
みんなに感動させられて、こんなに嬉しい気持ちになれたから。
私はエリナさんの子じゃない。
でも、エリナさんはずっと、私のお母さんだ。
何処までも果てしない真っ暗な世界で涙する私達を、魂の星達だけが見守っている。
……………………
//////////////////
やっと、睡魔という泥沼から這い上がる。
岸辺に上がって、余韻に引きずられそうになる意識を、体を動かすことで繋ぎとめた。それでも、世界がぐるぐる回っているかのような酩酊感は消えない。相当、体の調子は悪いらしい。
———おはようノスト 具合はまだ悪そうね
「………………」
天井を睨み付けたまま、この感覚に慣れるか不快感が薄れるかを待っていたら、横から波紋のように響く声がした。他に反応がないことを見ると、部屋には自分とグレイヴ=ジクルド以外いないようだ。
———3日間寝ていたわ 大部分が血液不足と破壊の乱発が原因ね
「…………状況は」
3日間のブランクを埋めようと、ほぼ反射的に聞いた。喉が渇いているせいで、ガラガラの声しか出ない。
力の入らない腕で起き上がろうとするが、くらくらしてすぐにできなかった。しかし、壁際にベッドが配置されていたことが救いだった。なんとか身を起こし、壁に上半身を預けて座る。ひどい貧血だ。
おまけに、やはりステラに浄化してもらってから幾度か破壊を使っているから、右手の感覚が鈍い。試しに、枕元にあったグレイヴ=ジクルドを握ってみるが、握っているという感覚は薄い。
———まだ何も起きていないわ でも時間の問題ね
———貴方が回復するのが先か 向こうが仕掛けてくるのが先か
否 すでに先手をとられた———
不意に、音が消え去った。
まるで無音の波が攻めてきたかのように。辺りを、耳に痛いくらいの異様な静寂が包み込んだ。
ジクルドの警告の余韻さえ途中で掻き消え、世界が停止する。
死んだように止まった部屋の中が、なぜか急に異質に見え始める。
これは本当に、自分の寝ていた部屋か?
同じ配置、形をした、まったくの別物か?
目で認識できるものがすべて疑わしい。手の内のグレイヴ=ジクルドも、自分自身さえも。
そんな虚飾の世界で、部屋のドアが開く。
音さえなく、ドアの向こうから現れたのは、一人の少女。
つややかな淡い茶色の髪を持つ少女は、その優しげな雰囲気には不釣合いな、一振りの山吹色の剣を携えていた。
この嘘臭い世界で、最も嘘臭い少女が、嘘臭く微笑む。
「その感覚は正しいです。アルトさんが展開している、『世界が自分を認知できない術式』の逆バージョンです。これは、『貴方が世界を認知できない術式』。つまり、外界の刺激じゃなく、貴方の認識こそが世界。あ、術式の軸の私は除きますし、実際は2つとも展開してますよ?」
ステラの顔をした少女は、ステラの声ですらすらと説明する。
彼女が現れた時から剣を構えていたノストは、やけに詳しいその説明を聞いて確信する。コイツはステラじゃない。中身は、神だ。
……そう思った途端、部屋の風景が幻のように掻き消えた。神という言葉から連想した結果か、真っ黒な星空、ユグドラシルに似た景色に替わる。
「これは私を中心に展開している術式なので、私が近付けば皆こうなっちゃいます。この方が、誰にも邪魔されなくて済みますから。……あ、気絶させただけですよ?」
それは言外で、「近付いた」と言っていた。すでに皆、何かしらこの術式に飲み込まれ、この少女に倒されてきたのだろう。
——冷や汗しか出ない。この家には、教団メンバーを始め、自分より超越した力を持つアルカのセルクとミカユもいた。その全員が、この小柄な少女たった一人に敵わなかったと言うのだ。
元々、自分に勝ち目はない。以前の攻防で、絶望するほどの格差があることを知った。それに加え、今はこのコンディションだ。勝てる見込みなど塵すらない。
少女の狙いは、間違いなく、自分が手にしているグレイヴ=ジクルドなのだから。
……と。
少女が剣を手放した。呆気なく、ぽいっと。
思わぬ行動。拍子抜けして動揺するが表情は変えない。
意図がわからず、虚空で粒子に変わって消え行く山吹色を呆然と見つめる。それから少女を見ると、彼女は、こちらの警戒心を和らげるように微笑んだ。
ステラの顔で。
「少し、お話しませんか?」
「………………」
「私は、貴方とたくさん話したいことがあるんです。貴方は予想外の存在。だって、私がグレイヴ=ジクルドの破壊のために描いたシナリオに、貴方は入っていなかった。そんな貴方が、どうしてステラの隣にいて、どうしてステラの行動の中心に成り得たんでしょう?」
……何のつもりか、真意が掴めない。油断させるためか?
だが、ある意味では、こちらにとっても有益だ。何か、この状況を脱出できる案を練る時間と、情報を引き出すことはできるかもしれない。
神剣を構えたまま警戒し、しかし何も言わないノストを見て、了承だと判断したらしい。少女はひとりでに語り始める。
「貴方は、分離すると思わなかったジクルドの、元契約者。そのせいで3年前から不老だったけど、ジクルドの寄生が外れて、時の流れに戻った。一度死んで、でもステラが呼び戻した生還者。3年と15分の命の時間のズレを持つ者」
「………………」
「奇跡?偶然?必然? 体の半分をボルテオースに置き換えられた今の貴方は、聖女以上に神子に近い人間です。人の身では崩壊死するおそれもある真性の破壊を、紛いなりにも扱えるのはそのせいですか?」
「………………」
「貴方は人間ですか?それとも、神に近付いた人間ですか?なら、人外という括りでいいんですか?」
「………………」
「貴方は、何者ですか?」
かつて命を生み出したはずの創造主が誰何する。
——世界は、変わっている。少しずつ、少しずつ。
神の手から離れたエオスは、神さえ知り得ない成長を遂げているのだ。
自分が何者かなど、考えたこともなかった。
剣の一族レミエッタ公爵家の息子という揺るぎない肩書きが、すべてを支えていた。
だが、今は?
3年の止まった時を過ごし、その家と縁を切り、一度死んで蘇って、神子を追っている——
今、ここにいる自分は、何者だ?
「———貴方は……ステラの、何ですか?」
透き通った疑問の色で、ステラと同じ山吹色の瞳が、そこに自分の姿を閉じ込めている。
その瞳に映る自分。……それを見て、納得した。
……なぜ今まで、気付かなかったのだろう。
何だかんだで、振り回されているのはこちらだ。
神子というだけでいろいろあるし、アイツ自身の性格でもいろいろあるし、まったく人騒がせな神子だ。
今まで一体、誰が助けてやってきたと思う?
いつしか口元に、淡く笑みが刻まれていた。
「下僕だ」