raison d'etre

60 邂逅

 私は、複写だ。
 ……複写。3年前のルナさんの姿を、そのまま切り取った存在。
 だけど、『私自身』は、ルナさんとは違うらしい。大体、ルナさんが私ほどお馬鹿なわけないだろうし。
 それに変な力もある。クロムエラト……人間なら絶対持たないはずの力。
 作られた時に、一緒に付けられたのかな?って思ったけど、みんなの話を聞いて、こんな力は普通じゃないってわかった。アルトミセア様だって転移の術式が精一杯だったのに、私の想いに呼応して発動する力なんて……彼女にも作れるはずがない。

 答えはきっと……ここにある。




 ……冷たかった。
 私は……うつ伏せに倒れてる。地面に触れているすべての部分が、ひんやりと冷たい。
 うっすら目を開くと、ゆらゆらと揺れる縦の境界が見えた。……これは……水?
 体を起こそうとして手を動かすと、ぱしゃんと音がした。やっぱり水だ。でも……何で?何処も濡れてない……。
 そこは、背景が黒に塗り潰された世界だった。私はそんな世界の、淡い緑石がたくさん敷きつめられた大きな輪型の上にいた。真ん中に空いた穴から、一直線に流れ落ちてくる水と……それを取り囲むように、真上に流れ上がる・・・・・水。
「……へ……?」
 ……今、ものすごく変なものを見た気が。
 何気なく上を見てみると、上にも輪の土台が浮いていた。真ん中に空いた穴から、ずっと上の方まで輪の土台が続いているのが見える。その頭上の輪の表面には、私が今座っている場所と同じように、水が浅く満たされていた。呆然と見上げる私の顔がその真上の水面に映り込む。
 ……な、なにこれ?どうなってるの?くっついてる(?)ってことは、ちゃんと重力があるんだろうけど……どっち向きに働いてるの!? 私が座ってるこっち?それとも頭の上の、あっち?

―――     時を   いた 希望の   ―――

「っ……」
 ……不意に響いた、その声は。立ち上がろうとした私の心を震わせた。それ以上、動けなくなる。
 ……知ってる。この声。知らないのに……私は知ってる。
 懐か……しい。……うん……懐かしい。知らないのに……。
 だけど、何を言っているのかよく聞き取れなかった。というか、ところどころ音が抜けていた。わざと抜かしてるわけがないから、私に聞こえてないだけ……?変なの……。
 私が感動しながらも何も言えずにいたら、老いた男性にも若い女性にも聞こえる声が、再び世界に響くように聞こえてきた。

―――なるほど いくらそなたと言えど 基盤が人間ゆえに聞き取れないのだな 創生神語は―――
―――聞こえているだろうか? そなたの言語に合わせたつもりだが―――

「…………え、あっ、は、はいっ!き、聞こえてます!」
 突然、流れるように聞こえてきた言葉に私は反応が遅れた。思わず勢いよく立ち上がり、びしっと敬礼して虚空に答える。
 えっと……成り行きで答えちゃったけど、誰?それに何処から話してるんだろ?ラルさんみたいに、本体がその辺にあったりするのかな……。

―――そうか では改めて言おう―――
―――ずっとこの時を待っていた 希望の星よ―――

「……え……っと……他の人にも言われたんですけど……その『希望の星』って、どういうことですか?」
 何処からともなく聞こえてくる声が発した言葉に、ぼんやりした頭で私はそう聞いていた。
 ……って……そうじゃないでしょ私っ!! 何でこの人がそれを知ってるわけ?ここは何処?! 状況理解ができてない!なんだかこの懐かしさに流されて、私、知り合いみたいに受け答えしてる!
 答えようとしたらしい声を遮って、私はわたわたした様子で手を掲げた。
「ちょ、ちょっと待って下さい落ち着いて見せます!ええとまず、私は確かナシア=パントにいて、それで泉を見つけて…………あ……」
 一人で慌ただしく自分のことを思い出していくと、すぐそれに行き着いた。
 ……そうだ。泉を見つけて……その泉に飛び込んだ。

『だからナシア=パントとヨルムデルは、最もユグドラシルに近しい。水面みたいなものだよ』

 水面みたいなもの。水面……水中と空中の境界。
 サリカさんの言葉を信じるなら……もしかしてここは……やっぱりと言うか、ユグドラシル?

―――いかにも そなたもそれを知って ここに来たのではないのか?―――

「え、えっと……どっちかって言うと、呼ばれたから来たって感じです……」
 私はただ、歌声に呼ばれて来ただけ。だから何処かに通じてるとか、全然……ってわけでもないけど、ほとんど考えてなかった。苦笑して答える。
 ……って、あれ?ここってユグドラシルなんだよね?
 なら……まさか、この人が……、
「…………貴方が……神様、ですか?」
 ……ユグドラシルに住まう存在。一人しかいない。
 私の慎重な問いに、声……神様は、淡々と答えた。

―――人はそう呼ぶようだ 真の名が創生神語で聞こえない以上 仕方あるまいが―――

 ……神様。グレイヴ=ジクルドと一緒に、園界エオスを創った存在。
 私は今……神様と会話してる。だけど、なんだか……あんまり驚かなかった。いや一応、驚いてはいるけど……仰天ってほどじゃない。
 大体、私、どうして神様に懐かしいって感じるんだろ。うーん……まぁいいや、とりあえず。
「どうして、私を呼んでたんですか?」
 ずっと神様は私を呼んでいたんだろう。あの歌声が聞こえた時から。私にしか聞こえない歌声で、私を呼んでいた。
 神様に呼ばれるなんて……変な感じ。啓示でも下るのかな?いやでも何で私に?ここは普通に考えて、フィアちゃんじゃ?
 『彼』(『彼女』?)の声は、ぬくもりがあるようにも、冷ややかなようにも聞こえる。ラルさんとジクルドさんを足して割った感じかな。
 その声で、神様は……微笑むように言った。

―――まずは挨拶しよう 初めまして 我が娘・希望ステラよ―――

「……へ?」
 なんか……サラリと流せないようなことが聞こえたような。

―――そなたがここへやって来るのを ずっと待っていた―――

「……あ、そーなんですかぁ……」

―――娘がどのように育ったか 少し興味があってな―――

「………………え、ええっ?? え……えええぇ!?! 娘ぇええ?!!」
 私の大声は、神様の声とは違って黒い世界には響いていかず、私の周囲で霧散して消えていった。
 何のご冗談でしょうか……神様もお戯れを……いや、ただの聞き間違い?
 だってだって、私は神様が娘を私!はい!? ちょおお落ち着け私!!
 わ、私が神様の娘っ?神様の娘が私!? なんで?どういうこと!?
 だって私はっ、ルナさんの複写じゃ……!!

―――いかにも そなたはあの娘の複写―――
―――そして そなたという術式と 【真実】を封じる術式とを構築したのは余だ―――

「あ……」
 ……神様が紡いだ【真実】という言葉を聞いて。混乱していた頭の中が、すーっと晴れていくのがわかった。
 疑問が解決したってわけじゃない。それよりも……気になったことがあった。
「……あの……【真実】って……何なんですか?」
 頭の中を駆け巡るたくさんの疑問が、そのたった一言に勝てなかった。虚空を見つめて、私は静かにそう訊ねていた。
 ……今、わかった。もう一人のノーディシルは、この人だ。
 この人は、こんなに私について喋っていても平然としている。【真実】を封じる術式は、神様さえも抗えないってサリカさんが言っていた。あの時は、例え話だと思ってたけど……きっとそうじゃないんだ。術式は、神様ですらも縛る。
 それに、よく考えてみれば当たり前だ。術式は、神の力オースでできてる。だから、その力の持ち主である神様なら、想いすら縛る【真実】を封じる術式や、私みたいな術式を作れて当然なんだ。

―――よかろう 元々それが余の役目だ―――

 イソナさんの時みたいに、「本当にいいのか?」とか聞かれると思ったけど、神様はあっさり承諾した。
 そして、呼びかけた。

―――カノン 導いて見せてやれ―――

「え……!?」
 私が声を上げた頃には、すでに私の目の前に、いつの間にか人影があった。その知っている影を見て、私は呼んでいた。
「カノンさん!! ……あ……えっと、お姉ちゃんの方がいいですか?」
≪……好きにしなさいよ≫
 私の問いに呆れ気味に答えるのは、波打つ長い金髪と、右目が蛇、右腕が羽、右足が獅子の姿をした、やっぱり半透明な女の子だった。間違いなくカノンさんだ!
 カノンさんもこう言ってるし、じゃあ……せっかくだから、お姉ちゃんで呼ぼうかな。……って、あれ?
「え?カノンさんが、お姉ちゃんってことは……カノンさんも神様の子なんですか?」

―――確かに そなたの前に作った子だ―――

 あ、だからお姉ちゃんなのか……でも、カノンさんと私、何でこんなに違うんだろ?
≪ついてくればわかるわ。案内するからついてきて≫
「あ、はい……って、え?カノンさ……お姉ちゃん、心読めましたっけ?」
≪今の私は、魂の世界ユグドラシルと同化してるから読めるわ。あと、無理して呼ぶくらいなら前の呼び方でいなさい≫
「う……」
 カノンさんはそう言いながら、私を置いて歩いていく。痛いところを突かれた私は、言葉に詰まった。
 うう、呼び慣れないっていうのバレてる……カノンさんはカノンさんだったから、なんかすぐに「お姉ちゃん」に呼び替えれない……。
 とりあえず、私もその後を追って歩き出した。歩く度に、足元の物凄く浅い水が跳ねる。私がうつ伏せになって寝てても、窒息しなかったんだもんね……凄く浅い。
 冷たい感覚はするのに、何処も濡れない水。……そういえば、ヨルムデルの地下湖に入っても濡れなかったって、カルマさんが言ってたっけ。神水……って言ったかな。
 …………あっ、そうだ!
「カノンさんっ!!」
≪何?≫
「私が壊れた時、私の心に呼びかけてくれたって聞きました。私は……その、あんまり、覚えてないんですけど……でも、ありがとうございましたっ!」
 振り返らないまま聞き返したカノンさんの背中に、私はお礼を言った。ほんと、助けてもらったのに、覚えてないなんて最低だ私……。
 しかしカノンさんは、こちらを振り向いて首を振った。長い金髪が揺れる。
≪礼なんていらないわ。私は何もしてないもの。結局、アンタの想いに負けて何もできなかった≫
「そんなことないです!私が、の……えっと、大事なこと思い出したの、カノンさんのおかげだったんですから!ほんっとうですよ!!」
≪…………そう。なら……よかったわ≫
 私が力を込めて言うと、カノンさんは短い沈黙を挟んで、呟くように言った。その顔に淡く浮かんだ微笑を見て、私はちょっとびっくりした。それから、えへへーっと笑う。
 カノンさん、本当に心配してくれてたんだ。今も、自分が役に立ったって聞いて、ちょっと嬉しそうだし。カノンさんの笑顔、初めて見た。
≪とにかく、案内するからついてきて≫
「あ、はいっ」
 そう言ってカノンさんは私に背を向け、歩いていく。その後を追うと、輪の端に差し掛かったカノンさんは……そこから床を蹴って、黒い世界に飛んだ! ……え、あの右の羽で飛んでるの……?
 しかも、ぼんやりその後姿を見ていると、突然その姿が掻き消えた。えっ!?と思って目を凝らしてみるけど、この黒い世界に凄く目立つはずの金髪の後姿は何処にも見えない!
「えっ、あの、カノンさん!?」
 ちょ……追おうにも追えないよ!っていうか飛んだ時点で追えないよ!
 カノンさんの返答はない。その代わりに、神様が教えてくれた。

―――目に映らなくなっただけだ そこにいる―――
―――無用な心配だ 余の娘のそなたなら追えられる―――

 ……それって、すごい屁理屈じゃっ?! 逆にもっと心配になる!
 ここを飛ぶの?と思って下を覗き込んでみたけど……真っ黒で何も見えない。地面があるのかもわからない。
 こ、怖いなぁ……うう。でも、追わないと【真実】について聞けないし……!
「う、うう~………………えーいっ!!」
 もうどーにでもなれ~!とヤケになって、私は床を蹴り上げ、輪の外へジャンプした!すぐに下に引っ張られるかと思ったけど、そんなことなくて、むしろジャンプした勢いのまま上に進む。結構勢いよく飛んだから、スピードが速い!
「ひゃああっ!? ちょっ、あの、カノンさん何処ですきゃああー?!」
 そう叫んで、止まってぇえ!って思ったら、緩やかにスピードが落ちた。止まった私は、そこに浮くような形になる。……クロムエラトが働いた……のかな?
 と思ったら、やっぱり心を読んで神様が説明をくれる。

―――ここはいしきの世界 想いがじかに働く―――

「あ、なるほど……」
 そっか……魂とか意識体だもんね。私は意識だけじゃないけど……全部オースでできてるから、そのまま入ってこれたのかな。じゃあ今回はクロムエラトじゃなくて、この世界の力……ってわけか。
 ふと、何気なく背後を振り返ってみると、私が飛び立った緑石の円盤が、縦に連なっているのが見えた。それは、水の滴らせる1本の樹を象っていた。

『其は環、廻る世界。常闇を照らす魂。水をまといし樹。其は、影の如く近しい者』

 ふと思い出したのは、カルマさんから聞いた、アルトミセア真言だった。
 あれって、世界を謳ったものらしいけど……一言も、エオスのことだとは言ってない。むしろ、ユグドラシルの情景を言っているような気がする。常闇を照らす魂と言い、水をまといし樹と言い。私が壊れてた時、ユグドラシルから、カノンさんがノストさんの「影」に干渉してきたらしいし。
 にしても、カノンさん何処行ったんだろ……と思って見渡したら、いつの間にか目の前にいた。さっきまで全然見えなかったのに、今ははっきり見える。私が探したから、その想いが働いて見えるようになった……ってとこかな。
 私はここを、ずっと真っ黒な世界だと思ってたけど、そうでもなかった。黒い中、私の周囲にも、星のように煌く無数の光が散りばめられている。
 まるで星空に浮いてるみたいだ。今なら本当に掴めそう……ところで、これって星?
≪違うわ。この世界で煌くのは、エオスでの転生を待つ魂達よ≫
「たま……しい?これが……?」
 魂って人魂みたいなイメージだったから、私は思わず、手近の光に手を伸ばしてみた。
≪っ、ダメよ!!≫
「え?」
 その途端。
「――っ!!」
 ぐおっと、頭の中に、物凄い量の映像の奔流が流れ込んできた。
 凄まじい速度でめくられていく映像。青い空、泣き顔、街並、誰かの笑顔、へこんだ壁、女性の……

 ……突然、映像が途切れた。
「…………くっ……」
 クロムエラトのおかげなのか、この世界のおかげなのか、わからないけど。離れたいっていう自分の意思で、光からなんとか手を引いた私は、片目を瞑って頭痛に耐えながら、その光から少し離れた。
 ……あたま……痛い。今の……このひとの、生まれてから死ぬまでの、生前の記憶……なんだ。凄い量……こんなの、人は持ってられない。だから適度に忘れてるのかも……。

―――遅い忠告だが 魂には触れるな―――
―――いかに余の娘とは言え 人の身である以上 そなたはその情報量には耐え切れぬ 意識から壊れるぞ―――

「あ、あはは……そうみたいです……」
≪……先に言っておくべきだったわね……もう、驚かせないで≫
 神様のあっさりした言葉に、身を持って実感した私は苦笑いした。それを見てカノンさんも胸を撫で下ろす。意識から壊れるって……怖っ!あ、危なかった……!
≪とにかく、ステラ、ここへ来て≫
 カノンさんに指示されるまま、私は彼女の近くに浮遊して近寄る。
 それから、カノンさんを改めて見て、えへへーっと笑った。カノンさんが訝しげに私を見る。
≪……何?≫
「なんか、カノンさんがお姉ちゃんって嬉しくて」
≪おだてても何もないわよ≫
「おだててませんよ!カノンさんとまたお話できて、よかったですっ」
≪……そう≫
 言葉は素っ気無いけど、何処か安心したような表情で彼女は言う。うんっ……ほんとに、よかった。もう会えないだろうなって思ってたから。
 話を区切りを見計らって、神様が言う。

―――今から そなたの目の前にある魂が刻んだ 【真実】を知るに最もふさわしい記憶を映す―――
―――余が説明するより 見た方が理解しやすいだろう―――

「【真実】の……記憶?」
 目の前の魂って言われて、前を見ると、確かにそこに1つの光が浮いていた。握り拳くらいはあるかな……。
 この魂さんの、【真実】の記憶。ってことは……この魂さんは、【真実】を知っていた人なんだろう。じゃあ、もしかしてこの世界じゃ、結構若い方?【真実】がどれくらい前からのものなのか、よくわかんないけど……【真実】を知って、エオスで死んでしまった人なんだろう。
 …………って、え?
 それって、まさか……
≪……そう、アンタが思っている通り。これは生前「ヒース=モノルヴィー」と呼ばれていた魂よ≫
「……おと……」
 お父さん。そう口にしかけて、途中で気付いて言葉を止めた。
 ……違う。私は複写。生みの親は神様。……お父さんは……ヒースさんは……お父さんじゃないんだ……。
 そういえば私、何でヒースさんがお父さんっていう記憶を与えられてるんだろ。余計にややこしい。

―――それもすべて この者が知っている―――
―――元々ノーディシルは この魂を含めて三人だったのだ―――

「え……そうだったんですか?」
 ノーディシルって……ヒースさんもだったんだ。でも彼は、死んでしまった……。
 私のオリジナル・ルナさんのお義姉さんのイソナさんと、私の生みの親の神様と……私の仮のお父さんで、ルナさんの師匠さんの、ヒースさん。三人とも、私に強い繋がりがある人だ。時期を見て、少しずつ【真実】を語るつもりだった……?

―――すべての【真実】を この者に―――
―――今は物言わぬが その記憶で役目を果たしてもらうとしよう―――

 神様がそう言った直後。ぐにゃりと、渦を巻くように星空がゆがんだ。
 ゆがんだのは風景で、私が呆然とそこに浮いていても平気だった。
 そして、星空と入れ替わるように現れてくる別の風景。その風景で黒かった世界が、一面緑色に彩られる。う……いきなり変わったから、黒に慣れてた目の奥がちょっと痛い……。

 少し目が慣れてから、よく見てみるとそこは森だった。
 それもただの森じゃない。差し込む神秘的な木漏れ日、漂う白いもや、見慣れない植物。……ナシア=パントだった。
 ……え?あれ?もしかして戻って……

『ねぇ師匠、どうだった?1泊した感想はっ?』

 そう思った矢先。聞き覚えのある声が響いた。
 …………私の……声?
 世界が、横に動いた。まるで見下ろすように、下を映し出す映像。
 ―――そこに、「私」がいた。
 ……ううん、違う。
 今の私そのものの姿をした、3年前のルナさんがいた。