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masquerade

32 自分探しの旅

 【真実】って何?  誰に聞けば、教えてくれるの?  カノンさんも、サリカさんも、フィアちゃんも……それを知っているみたいだった。  だけど三人は、自分の口からは言えないって……そう言って、語ろうとしなかった。  そして……口にこそ出さないけど、なんとなくわかる。  不思議がる私から逃げるように、別の人にバトンタッチしている。まるで、責任から逃れるように。  なら、誰に聞けば、教えてくれるの?  誰ならいいの?  そんなにも、重いものなの……?  ……目が覚めた。  でも目を開けても、自分が起きたって気がしなかった。目の前は真っ暗で、辺りは静寂で。  のろっと体を起こしてみて、部屋が暗いことに気付く。窓の外を見ると、東の空はうっすらとも明るくない。つまり……まだ夜中らしい。  おかしいな……私がこんなに早く起きるわけがない。何でだっけ?って記憶をあさってみると、山賊に襲われたことを思い出した。  それから胸が苦しくなって、その苦しさが引いて……そのまま、気絶した。よし、時間はたっぷりあるし、少しずつ整理してみよう。  ノストさんと山道を歩いてて、山賊集団に襲われた。ノストさんは女の人と戦ってて、私はおっさん達に囲まれてて。  で、胸が苦しくなったのは……おっさんに殺されそうになったからだ。死にたくないって思ったら、斧を振り上げてたおっさんが騒ぎ出して、顔を上げたら……そう、手が凍りついてた!  氷なんて、思い当たるのは1つしかない。私の中にあるとかいう……<光波>カノンフィリカ。  私が死にたくない!って思ったから、その力がいきなり出てきたのかな……とにかく、あれは私がやらかしたことだ。あのおっさん、大丈夫だったのかな……敵?だけど、なんか心苦しい……。  そしてその後、急に胸が苦しくなって、ウォムストラルに呼ばれた。確か、再生の歌を響かせろとかなんとか……うーん、忘れた。  とにかく出したら、いつも通り光って……苦しさが引いて、私は気絶した。……こんな感じかな。  もう一度、窓の外の東の空を見てみる。……うう、さっきと全然変わらない。暇だよぉ……気絶して多く睡眠とったみたいだし、全然眠くない。  ―――答えて 希望の子よ 「……え?」  この静けさの中だと、小さい音でも大きく聞こえる。耳に届いた、知っている歌。でも、いつもと違う歌。というか……歌じゃなかった。普通の、言葉。  とりあえず、ポケットからゴソゴソとウォムストラルを出してみる。暗闇の中、眩く光る、4分の1だけ欠けている妙な形のそれを、両手にのせてみて反応を待つ。  すると。  ―――気付いたということは わかるようになったのね 混沌神語が 「へっ……?」  ―――貴方の場合 無意識の内に使いこなしているだけで 自覚はないのでしょうけど  そう言って、小さくクスクス笑う。優しげで、上品な……女の人の声だ。それが、静かに語りかけてきた。  え、なになに?! 何で石が喋ってるの!? っていうか私のこと知ってるー!?  私の頭の中は混乱していて、何がなんだかわからない。顔に驚きを表現するのさえ忘れてる。多分、ポカンとアホ面してるに違いない。  ―――そんなに混乱しないで と言っても無理かしら  声は、まるで私の心を読み取ったように言って、おかしそうに笑う。  声だけ聞くと、普通の女の人みたいな印象。それに少し安心して、ようやく落ち着いてきた私は、手のひらの上で虹色に光るウォムストラルに向かって、そーっと声をかけてみた。 「あの……誰ですか?」  ―――声を発しなくていいわ 石と話しているなんて不自然だもの 心で思うだけでわかるから  ……とか注意された。っていうか、この人の声、私は耳から聞いてるのに、相手は私の心の声で聞くんだ……まぁいいや、心の中で思ってみる。  貴方は誰?  ―――私は貴方を見てきた存在 ウォムストラルそのもの  …………え……ええっ?えええ??!  いきなり仰天発言された!呑み込むのに遅れている私をよそに、声は何処となく急ぐ様子で言う。  ―――今はまだ不完全だから 長くは話せないのだけど  ―――貴方に 遺物のことを教えておきたくて  遺物……って、もしかして、アルカのこと?混沌時代の遺物だとか言ってた気がする。この場合、もしかしてカノンフィリカのことを指してる……?  ―――遺物は性質故に 貴方の体を侵してしまう 今後はうかつに触ってはだめ  は、はい、わかりました。あんな苦しい思い、もうしたくないし。  ―――今回は 私が結合を調整したから もう大丈夫  ―――でも 不完全な今 私の力にも限度があるの 今度は助けてあげられない  結合……?そういえば、フィアちゃんも似たようなことを言ってた気がする。結合力、とかって……。  うーん、とにかく、もうあんな苦しいことはないらしい。それはそれで安心。  ―――貴方と結合した遺物は 貴方の意思では操作できない とある拍子に発動する気まぐれ屋さん  ―――でも根源は同じもの 貴方の感情の高ぶりに反応するでしょう  ―――だから注意して 後悔しないように 自分のせいだと思わないように  ……えっと……??  とりあえず、平静を保てばいいってこと、かな……?  何を言ってるのか全然理解できていない私に、女の人の声は微笑むように言う。  ―――何もわからなくていいの 何も知らない今は  ―――貴方が真…を知る…では  ―――私も ……じょも それを……んで……から 「えっ……?! ちょ、あのっ!?」  突然、掠れてきた声の主に、私は思わず声を出して呼びかけた。でも、声は遠くなる一方で。  ―――もう これ…じょう…む……  ―――わ……… これ……も ……たを  ―――………て……… 「………………」  ……それきり、石は黙り込んでしまった。相変わらず、虹色の綺麗な光を撒き散らすだけ。  そういえば、名前とか聞いてないな。あ、でもウォムストラルそのものって言ってたから、名前もウォムストラルだったりするのかな?まぁいいや、今度話せた時に聞いてみよう。  ポケットにウォムストラルをしまい、窓の外を見やると、さっきまで真っ暗だった東の空に一筋の光が差していた。よかったぁ~、もうすぐ夜明けだ。  それにしても、うう、寝起きだからかな……体が肌寒い。私は寝ていたベッドの布団を手繰り寄せて、体に巻きつけて……って、え?  ちょっと待って……ベッド?? ってことは、室内!? そ、そういえば、ここって何処~~っ!?  ようやくそんなことに気付いて、私は暗がりの辺りを見渡した。暗くてよく見えないけど……やっぱり何処かの部屋だ。ベッド以外にはめぼしい家具も見当たらないから、広く感じる普通の部屋。  ふと目線を落とすと、ベッドに寄りかかっているカタマリが目に入った。布団をかけて、ベッドに寄りかかったまま寝ている……この暗がりでもわかる、見慣れた銀髪の後ろ姿。 「ノストさん……?」  声をかけてみたけど、返事はない。やっぱり寝ているらしい。  ……なんだか、変な感じ。ここまで来る途中にも、私がベッドで、ノストさんが床ってことはあったけど、実際に彼が床で寝ているところは、一度も見たことなかった。  だってノストさん、朝起きるのは私より早いし、寝るのは私より遅いし。ジクルド使った時とかは、真っ先に寝るのにね。  なんとなくベッドから降りてみようと思って、足を動かした時、右膝が痛んだ。あ、そういえば私、コケてケガしたんだった……無意識に右手で膝を押さえてみると、ざらさらとした手触り。  えっ?と思って、布団を膝のところまで剥いでみた。すると、傷を負った右膝には白い包帯が巻かれていた。  ……くすっと、小さな微笑が浮かんだ。思わず、睡眠中らしい銀髪の頭の見つめる。  包帯巻いてくれた人なんて、この人以外いないわけで。ほんと、口は悪いけどいい人だよね。  ……はっ、そういえば……よく考えてみれば、ここまで運んでくれたのもノストさんっ?うわぁ、そう考えると恥ずかしい~っ!!  窓から、ぼんやりと日の光が差し込み始めた。夜明けの温かな眩しい光に目を細めてから、私はベッドを降りる。そして、布団の中であぐらをかいているらしいノストさんの横にぺたんと座り込む。  銀髪とその白貌は、薄闇の中でもはっきり映る。いつものことだけど、ほんっと綺麗な寝顔してるなぁ……こうして黙ってればいいのにね。  静かな部屋で、静かに時間だけが過ぎていく。私はノストさんの横に座り込んだまま、彼が起きるのを待つ。早起きのこの人のことだから、そのうち起きると思う。  そう思って、寝顔凝視したまま待ってたら、ノストさんの閉じられた瞼が少し震えた気がした。  あ、起きたかな?と思って見ていると、すぅっと目が開いた。そして、さらに2回くらい瞬きをしてから、首が横に動いた。で、隣にいる私と目が合うわけで。 「おはようございます、ノストさんっ」  実は、これを言うタイミングを窺っていた私は、ここぞと言わんばかりに笑顔で言った。さわやかーな演出をしたつもりだったんだけど……寝起きで、何処となくいつもの覇気がないノストさんは無反応。ただ、私をじーっと凝視していた。  え、え?逆効果!? と、私が恥ずかしくなってわたわたしていると、ノストさんは長い息を吐き出しながら私から視線を外し、正面を向いた。 「説明しろ」 「へ?わ、私がここで待ち構えるまでのいきさつをですかっ!?」 「したいのか?」 「いやいや遠慮します!!」  ノストさんの寝顔見てましたなんて、まっさか本人に言えるわけがない!私は慌ててブンブン頭と両手を振った。 「じゃ、じゃあ、説明しろって……何をですか?」 「考えられなくなったのか。さらに落ちこぼれだな」 「お、落ちこぼれ……え、えっと……、…………あっ!! わ、忘れてました……昨日のことですねっ?」  さっきまでそのことを思い出していたのに、なんだか忘れていた。少し眠そうなノストさんに言われ、私はようやく思い出した。  さて……説明しろって言われたけど、一体、何処から説明すればいいんだろう。そういえば、ノストさんには、カノンフィリカが体内にあるらしいことさえも言ってない。うう、結構長い説明になりそう……。  朝日はさっきより昇っていて、ちょうど私とノストさんの顔を照らしていた。その温かい光で体を温めながら、説明し終わった私はノストさんの反応を待った。  ノストさんは、起きた時と同じ体勢で、あぐらをかいたまま。考え込んでいるらしく、視線は正面ナナメ下の方に向いている。私は、彼の隣に膝をついて座っていた。 「……ウォムストラル、か」 「本人も、『ウォムストラルそのもの』って言ってましたし……あ、あと、フィアちゃんも、グレイヴ=ジクルドは自我を持つ剣だとか言ってました」  「ウォムストラルそのもの」って名乗ったあの声の主の話もした。あの時はびっくりしたけど、よく思い出してみれば、フィアちゃんがそんなことを言っていた気がする。もしかしたらジクルドにも、自我があるのかもしれない。  と、そこで、ノストさんは顔を上げて私の方を見た。へ?とキョトンとする私を、上から下まで見てようやく目を逸らす。 「馬鹿は治りが早くて助かるな」 「……それは、褒めてるんですか?馬鹿にしてるんですか?っていうか後者ですよね?」 「聞くまでもねぇだろ」 「やっぱり馬鹿にしてるんですね!? まぁ確かに、治りが早いのはいいことですけど!なんか、こう……モヤっとします!」  ……どうやら私の容態をチェックしていたらしい。素直に「もう大丈夫みたいだな」とか言えないのかなぁ……それも爽やかすぎて怖いけど。  動悸は収まったし、ウォムストラルのおかげでもう起きることもないらしい。今、心配することは何もない……って、あれ、そういえば。いや、それを聞く前に……。  私は膝を揃えてノストさんの方を向き、正座して彼を見て。 「あの、ノストさんっ、」 「いらんうるさい」 「って、ええーっ!? っていうか、私が何を言おうとしたかわかるんですかっ?!」 「溜めの長さでわかる」 「ど、どういう見分け方ですかそれっ! ……で、でも!」 「いらん黙れ」  私の言葉を遮ったノストさん。迷惑そうにそう言ってるけど……結構な間、一緒にいるから、なんとなくわかる。多分、お礼なんかいらないって言ってる。私を運んでくれたことと、傷を手当てしてくれたこと。  でも、それでも……、 「……でも……やっぱり、言わせて下さい。どんなことでも、お礼は大事ですっ……」  遠回しな彼なりの気遣いなんだろう。この程度のこと、お礼なんかいらない。そう思ってるのかもしれないけど……私にとっては、それはとっても重大なことで。  私が切実な気持ちで言うと、ノストさんは一瞬考えるような間を置いてから言った。 「……なら、頭は下げるな。お前の礼の仕方は見苦しい」 「はいっ……ノストさん、ありがとうございますっ」  ようやく、お礼が言えた。スッキリした私は、思わず笑顔。  もしかして、頭を下げてお礼を言うのがウザがられてた?確かに私、お礼を言う時、がばっと頭を下げて言うから……もしかして、それがお気に召さなかった?今後気をつけよう……。  ふとそこで、ノストさんは床から立ち上がり、眠ってなまった体を起こすように、少し伸びをした。それから首を回したり指を鳴らしたり、まぁとにかくさまざま。さすがのノストさんでも、寝起きはやっぱりだるいものらしい。 「あ、それから、ノストさん。私が気絶した後、どうしたんですか?それとここ、何処ですか?」  私も立ち上がって、いろいろ覚醒中のノストさんにそう聞く。お礼を言ってからじゃないと本題に入れないなって思ったから、お礼を先にして、で、ようやく本題。  私はおっさん達に囲まれていて、ノストさんは女の人と戦ってたはず。あの場面で気絶した私。普通なら、それを好機に襲うんじゃないかなぁ。あ、でも、女の人が「一時休戦だ!」とか叫んでたような……うーん。 「お前を運んで寝た」 「や、それはわかりますけど……先に言っておきますけど、そこまで馬鹿じゃないですからね!?」  覚醒作業が終わったらしいノストさんは、腕を下ろしてそう言ったけど……さすがにそれはわかってた。ついでに私が一言付け加えると、ノストさんは長い間を置いてから、 「………………凡人が」 「……今、私に何も落ち度がなくてガッカリしませんでした?っていうか、しましたよね?で、つまらない奴だなぁってことで、凡人って……」 「やかましい黙れ凡人」 「うう、はい……で、何があったんですか?」  と……私が、ノストさんに聞いた時。ガチャ、と小さな音がした。  音の方を見ると、今まで暗くて気付かなかった位置にドアがあった。そのドアが開いていて……そこに立っている人物は、見たことのある人で。その人は、多分アホ面な私を見てニッコリ微笑んだ。 「お、起きたね。おはよう、お姫様。気分はどう?」 「な、な、な……な、何で貴方がぁあッ!?」 「あれ、ハーメルが話してない?って、あー、そういや名乗ってないな~……あちゃー」  私がビックリして、失礼だけど身構えたら、その人はそう言って額に手を当てた。もったいないことに、綺麗な短い金髪がくしゃっとなっている。  ドアを開いた人物は、昨日、ノストさんと戦っていた、あの金髪の女の人だった!な、何でこの人がここに?! いや、逆!? 何で私がここにいるの~~っ!!? 「な、何がどうなってるんですかっ!? 何でここが貴方にいるんですか?!」 「あはは、逆だよ」 「あっ!! え、えっと……な、何で貴方がここにいるんですか!です!」 「逆なんだけどなぁ……」 「へっ?! ま、まだ逆ですか!?」 「ん?あぁ、はははっ!違う違う!」  部屋の中に入ってきながら、女の人は動揺して何を言っているのかわからなくなっている私の言葉に笑い出した。な、何がおかしいのー!?と私があわあわしていると、女の人は笑いの余韻を残したまま言う。 「ここはアタシらの家だよ。だから、ここに入ってきてるのは、キミらの方なんだけどなぁって」 「アタシらの家って……さ、山賊の家……?!」 「あー、大丈夫だよ、もう襲ったりしないから。どっちにしろ、アタシはハーメルには勝てないみたいだから。キミが倒れてから、アタシとハーメルは休戦したんだ。で、アタシが寝床を貸してあげて今に至るってわけ」  敵である山賊の家に寝てたなんて、私やばいんじゃ!?と思ったけど、女の人は私が気絶していた間のことを、ざっと説明してくれた。はぁ、なるほどね……じゃあ、大丈夫かな。ノストさんもいるし。 「あ、いいこと教えてあげようか」 「いいこと?」  そう言って、女の人はイタズラっぽい笑みを浮かべて私の方に近付いてきた。私の傍にやってきた女の人は、そっと私の耳元に小さく囁いた。 「アイツ、倒れたキミのとこに、真っ先に走っていったんだよ。何食わぬ顔してたけど、ちょっと心配してたみたい」 「……え、ええっ!!? うそっ!絶対絶対、有り得ませんから!!」  思わずばっと女の人から距離を置きながら、必死に大声で言ってしまった。はっとしてノストさんを横目で見るけど、彼はいつものご様子。  う、うそだ!! だ、だってあのノストさんがだよ!? あ、有り得なさすぎる……!!  と言いつつ、想像してちょっと嬉しかったりする私の気持ちを見透かしたのか、女の人はクスクスおかしそうに笑って、「そうかな~?」と余裕そう。  ……ほ、ホントなのかな。……ホントだったら……それって嬉しい……。 「あ、そうだ。名乗るから、お姫様も名乗ってくれない?ハーメルはいろいろと有名だから結構」  ふと思い出したように、女の人がそう言った……けど、なんか違和感。私が首を傾げると、すかさず違和感の正体に気付いたノストさんが口を開いた。 「俺はわかって、この馬鹿はわからねぇのか」 「わからないさ。だってその子、ルナじゃないでしょ?物凄く似てるけどね」 「えっ……!?」  くすりと笑って言う女の人の言葉。彼女は何でもないように言ったけど、それは思いも寄らない言葉だった。  そうだ、何かおかしいと思ったら……この人、私がルナさんじゃないってわかってる!だから名前を聞いてきたんだ。そのことに鋭く気付いたノストさんが、確認も兼ねてカマかけ?した!  で、でも……この人、最初襲ってこなかったっけ?あの時は、ルナさんだと思ってたのかな……? 「……どうして……私が、ルナさんじゃないってわかるんですか?」  だから聞いてみた。私の問いに、腰に手を当てて、上品だけど勝気な笑みを浮かべる女の人は、「簡単だよ」とその理由を教えてくれた。 「ぱっと見た感じ、やっぱりキミはルナにしか見えないよ。アタシも最初はそう思ってた。だけど、よく見てみると……キミは、ルナとは瞳の色が違う。ルナはワインレッドだけど、キミは山吹色。さらに注意して見れば、顔つきもルナより幼いしね。ルナの妹さん?」 「…………私も……わかりません」 「わからない……?」 「わからなくて……探しているんです。私と、ルナさんの関係を」  私は迷いつつ、でも素直に答えた。  もしかしたら、彼女の言う通りお姉さんなのかもしれない。でも、カノンさんが私のお姉さんを名乗ってるし……とにかく私は、ルナさんとの関係をはっきりさせたい。 「ふーん……いいね、自分探しの旅ってわけか」  訝しげに整った眉を寄せていた女の人は、少し考える仕草をしてから楽しそうに笑った。  なんだかすっかり警戒心が解けちゃった私は、ふと、さっき彼女に聞かれたことを思い出した。 「あ、私、ステラって言います。ステラ=モノルヴィーです」 「へぇ……確かに戸惑うね。自分にはしっかり偉大な親がいるのに、そっくりな存在がいるんだから。そりゃ気になるよね」  女の人は、私の名前を聞いて同感するように頷いた。多分、私の「モノルヴィー」っていう姓を聞いて、私がお父さんの娘だってわかったからだと思う。「偉大な親」って言ってるし。 「アタシはシャルロット。シャルロット=デルフィーニ。このマオ山脈の代地主で、見ての通り山賊の頭さ」  女の人……シャルさんは、山賊っていう言葉が全然似合わない爽やかな笑顔で、そう自己紹介してくれた。